中央道・笹子トンネル崩落事故の教訓
中央高速道路・道笹子トンネルで発生した天井崩落事故は9人の死者を出す痛ましいものと成ったが、ここでISMS関係者はどういう示唆を受けるだろうか。学ぶべきことは少なくない。
<順不同>
交通路の遮断:
情報ネットワークの遮断については十分に検討する癖が付いているが、こういった物理的な交通路が遮断されたときにどのようなリスクが発生するか、リスクアセスメントで十分検討されているか。
- 物理的媒体による情報のデリバリーまたは調達に対するリスク評価
- 情報システム関連機材のデリバリーまたは調達に対するリスク評価
- 緊急時の代替手段の確保
検査の有効性:
今回の教訓でこれは最大重要なものです。崩落事故の2ヶ月前に5年に1回しかやらないもっとも念入りな検査を終えたところですが、危険性について把握できなかったという事実があります。
ISMSでも多くのチェックプロセスを入れていますが、その有効性を正しく把握できているかという問題が突きつけられます。
- ISMSの有効性評価:
無能な経営者はこのテーマに対してしっかりした意義認識も無ければ方法論の理解も有りません。適当なものでお茶を濁している経営者よりは、答えが見つけられずに悩んでいる経営者の方が健全です。
有効性とは目的に対する方法論(=管理)の有効性ですが、一般に「管理の目的」とは何かと問われれば簡単に答えを見つけ出せるのに、「ISMSの目的」とは何かと聞かれると急に難しくなる。それは当然のことなんです。
親会社から言われたから(仕方なく)始めただけのISMSでは最初のボタンの掛け違えを起こすことは珍しくありません。
答えが簡単すぎて申し訳ありませんが、目的はリスクの最小化ですね。この場合も達成したリスクの値で見る場合と、軽減できたリスクの値で見る場合と、2つの視点は欠かせません。
《ちなみに崩落事故ではリスクアセスメントはまったく実施していなかったと思われます》 - マネジメントレビュー:
経営者レビューですから大所高所的な判断でかまいませんが本質は把握すべきです。世の中の重大な事件・事象を投影させることです。3.11大地震がどのように反映されたか、サイバーテロがどのように反映されたか、など。要は生きた仕組みかどうか。発生した事件事故に対する対処の本質性。データ類の統計的理解。あまりにきれいなデータの嘘を見抜く。無能な経営者は素通りします。もっとも彼らは本当は有能だけど時間が無いから目が届かないと無能経営者の典型的な説明をします。 - 内部監査:
社内の遠慮、毎年担当が変わる(いつも素人)、十分時間を取らない(余計な仕事になっている)、自己申告で済ませる、など内部監査の有効性を阻害する要因はいくらもあります。形式的な内部監査でも表層的な問題を見つけることは可能ですが有効性には問題が出ます。部門のマネジメントの問題を指摘できなければ無意味です。「罪を憎んで人を憎まず」は考え物。人(力量)が決定的です。仕組みの問題、人の問題をしてできない内部監査はやり直し。 - 日常的な監視・点検:
データを統計的に見る目が必要。昨日と今日の違いが見える監視点検をやることです。実際に生じた事象から日常的な監視点検活動の有効性がレビューされなければいけません。インシデントと監視が連携していなければ無意味です。
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- 今回の崩落事故でも、吊り棒が落ちた原因として、地震の影響、鉄筋の劣化、地下水などによる腐食などいくつか可能性が素人の評論家によって述べられています。誰でも気づく懸念事項。
- では、定期的な点検で、それらはどのように点検されたでしょうか?。昔からの10年1日のやり方で吊り棒をたたくだけです。それで本当に分かるんでしょうか。しかも、手が届く範囲だけで。懸念事項と点検活動が何もリンクしていない。只の形式的な責任逃れのための仕事ですね。安全管理というより簡単にできることだけをやっているように見えます。
- これを何年も放置しているのは経営者の犯罪といっても過言ではないでしょう。
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記録管理
無責任な引継ぎ業務
その後の報道を見れば分かることだが、基本的な設計ミスはあるとしても保全部門は手間を掛けながら天上に上がって打音検査などを実施していた。前の組織では。それが、中部NEXCOに引き継いだ瞬間、以前やっていたものが手抜きされた。コストのために安全を捨てたことが明らか。だからあの事故は犯罪的なんです。いつか誰かが死ぬかもしれない。それは自分かもしれない。NEXCOはそういう無責任な保守業務を続けてきた。道路公団時代の方がまともな発想が出来ていたようだ。明らかに、誰かが点検をマニュアルから削ったのだ。その彼を逮捕してこそ正義というものでしょう。世の中では安全のコストに問題がすりかえられている。本質を維持してコストを低減させてこそ本当の技術でしょう。
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記録管理
- 道路、トンネル、橋梁、大型構造物。これらは利用年数が数十年。この場合の記録の保管は10年程度では論外。まったく不足。
- ライフサイクルレコーディング。これが常識。説明責任まで考慮すれば、最低でも2世代前までの記録も残しておきたい。某社のように記録は一切削除しないとする企業も有る。
- 道路公団の記録管理は分かりようもないが内容の適切さ、保管期限など懸念される。
無責任な引継ぎ業務
その後の報道を見れば分かることだが、基本的な設計ミスはあるとしても保全部門は手間を掛けながら天上に上がって打音検査などを実施していた。前の組織では。それが、中部NEXCOに引き継いだ瞬間、以前やっていたものが手抜きされた。コストのために安全を捨てたことが明らか。だからあの事故は犯罪的なんです。いつか誰かが死ぬかもしれない。それは自分かもしれない。NEXCOはそういう無責任な保守業務を続けてきた。道路公団時代の方がまともな発想が出来ていたようだ。明らかに、誰かが点検をマニュアルから削ったのだ。その彼を逮捕してこそ正義というものでしょう。世の中では安全のコストに問題がすりかえられている。本質を維持してコストを低減させてこそ本当の技術でしょう。
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